1.権利関係(民法)⑨保証債務・連帯債務

宅建試験では、特に連帯債務について頻出され、間違えるリスクが高くなっております。云い方を返せ正しく理解し、ここで一点取ることでライバルに差をつけることになります。一点に笑い、一点に泣くのが宅建試験の残酷なところです。重いテーマですが、債権者・債務者・普通の保証人と連帯保証人の責任の違いを正しく理解しましょう。

保証債務

たとえば、債権者Aさんが債務者Bさんに1000万円を貸したとします。保証人になったCさんは債権者Bさんが返済できなくなった場合は、Bさんの代わりに債務を負うことになります。これが保証債務という保証契約です。

この保証契約はAさんとCさんの間で行う契約であり、AさんとBさんで行う契約ではないのです。

保証契約の特徴

そのほかの保証契約の特徴を上記Aさん、Bさん、Cさんの例で解説します。

  1. 主たる債務者(この場合Bさん)の意思に反する保証契約もできます。
  2. 保証契約のみに、違約金つけることができます。
  3. 保証債務の範囲は元本だけではなく、利息や違約金さらに損害賠償など主たる債務に含むすべてを含みます。
  4. 保書契約は口約束だけでは抗力が発生しません。契約書などの書面もしくは電子記録であること。

保証人の資格

保証人になるのに、資格は必要ありません。Cさんは未成年であっても、制限行為能力者でもいいのです。弁済能力がなくても債務者Aさんがよければそれでいいのです。なのでこのこと理由に取消することはできないのです。

ただし、法律上または契約上主たる債務者(ここではBさん)が保証人を立てる義務がある場合は、

  • 行為能力者であること
  • 弁済の資力を有すること

と、民法は規定しています。

そして債務者(ここではCさん)が、弁済能力を失った(お金を返せなくなってしまった)場合は、債権者Aさんは主たる債務者のBさんに対して、資力のある人に変えてもらうよう請求できる。

但し、債権者自らが保証人を指定した場合は、変えてくれとは言えないのであります。

情報の提供義務

・債務者(ここではBさん)から依頼を受けて、保証人(ここではCさん)になった場合は、Cさんは債権者Aさんに、Bさんの債務の情報(返済状況、金利、損害賠償)の提供を請求することができ、Aさんはそれに対しての情報を提供することが義務付けられている。

・保証人の委託を受けた受けないを問わず、債務者Bさんが期限の利益を喪失した場合は、保証人のCさんに、2か月以内にその情報を通知しなければならない。

※期限の利益の損失とは、例えばBさんが期限付きの債務を負っていたとして、破産手続きの決定、担保の滅失・損傷または担保提供義務の事実が発生するなどして、期限までに弁済すればよいという「利益」を失ってしまうこと。

分別の利益

上記の例で解説しますと、保証人がもう一人(Dさんとします)いるように複数いる場合は、各保証人の負担する額は保証人数で割った額となるので、Cさん500万円、Dさん500万円のみ責任を負います。

求償権

ケーススタディで見ていきます。

Bさんは、Aさんに対しての債務1000万円を返済できなくなり、保証人であるCさんが代わりにAさんに1000万円を弁済しました。

CさんはBさんの代わりに弁済したのだから、もちろんBさんはCさんに1000万円を返してもらえるよう請求できます。これを求償権といいます。それではもう一つ例を見ていきましょう。

BさんはAさんに対する債務の保証人として、Cさん、Dさんの二人にお願いしていました。しかしBさんは債務1000万円をBさんに弁済できなくなってしまいました。しかし保証人のDさんは弁済する能力がなかったので、Cさんが代わりに全額1000万円をBさんに弁済しました。

CさんはDさんの負担する分を含めて全額弁済したのだから、CさんはDさんにたいして500万円の求償権があります。このように、債務者本人だけでなく他に保証人がいる場合は、その保証人に対しても負担分を請求できるのです。

保証の範囲

保証債務の範囲…特約がない限り、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償、その他すべて主たる債務に従たるもの。

保証債務の性質

保証債務には次の3つの性質があります。

  1. 付従性
  2. 随伴性
  3. 補充性

付従性

それでは、またケーススタディで見ていきましょう。

債権者Aさんは、債務者Bさんに対して、1000万円の債権を有しています。この保証人にはCさんがなっています。Bさんは1000万円を全額Bさんに弁済しました。さてCさんの保証債務はどうなるでしょう?

もちろん、AB間の債務が弁済されたことで、AC間の保証契約は消滅します。このように、主たる債務に生じたことは、保証債務にも効力をおよぼすのです。これが付従性です。

随伴性

随伴性のケースです。

債権者AさんがBさんに対して持っている1000万円の債権をCさんに譲渡したました。Dさんがその債権について保証債務を負っています。

こうした場合はDさんはCさんに対して保証債務を負うこととなります。これが随伴性です。

補充性

補充性のケースです。

債権者Aさんは債務者Bさんに1000万円の債権があります。そしてその保証人にCさんがなっています。AさんはCさんに1000万円を弁済するように求めてきました。AさんはBさんに請求していませんでした。

このような場合、Cさんは「まずBさんに請求して」と主張できます。これを「催告の抗弁権」といいます。(Bさんが破産宣告したり、行方不明の場合は抗弁権を主張できない)

もう一つのケースです。

債権者Aさんは債務者Bさんに1000万円の債権があります。そしてその保証人にCさんがなっています。AさんはBさんにお金がないといわれ、Cさんに請求してきました。Cさんは実は畳の下にお金を隠していることを知っているので、「Cさんを強制執行してください」と求めました。

と、このように弁済能力があることと、執行が容易であることを証明できれば、主張することができます。これを「検索の抗弁権」といいます。

連帯保証

連帯保証はこれまでの保証債務に比べ、より厳しいものとなります。端的に言えば「主たる債務者と同等の債務を負う」、ということです。

下表は、保証債務と連帯保証の相違です。

  保証   連帯保証 
付従性
随伴性
補充性×
分別の利益        ×
保証と連帯保証の相違(基本)

上の表を見ていただくとわかるように、

  1. 連帯保証には補充性がない…催告の抗弁権と検索の抗弁権がない(補充性の項を参照)
    CさんはAさんに催告されたら、「先にBさんに催告して」「Bさんを強制執行して」とは言えません。
  2. 連帯保証には分別の利益がない…連帯保証人は、他に保証人が複数いても全額請求される。(分別の利益の項参照)
    Cさん、Dさんが連帯保証になっていれば、両名とも全額債務を負いますので、CさんがAさんに「全額弁済して」と催告されれば全額弁済しなければなりません。

連帯債務

分割債務と連帯債務

分割債務とは

私たちは日常生活の中で、複数人で債務を負うことがあります。例えば友人同士3人がファミレスで食事をし、お会計(債務)が3000円でした。そして自分で支払う分は自分で支払うとします。これを分割債務と言います。

連帯債務とは

まずはケーススタディから。身近な例で、知り合いが住宅を購入しましたので、その例をとって解説します。分割債務と違い、数人の債務者が同一内容の債務を各自が独立して全額を負担する、というものです。

ある夫婦が共同名義で3000万円の土地付き一戸建てを買い受けました。そして銀行からペアローン(連帯債務)にて夫Aが1500万円、妻Bが1500万円の金銭消費貸借契約を結びました。

これが連帯債務でなく通常の債務であれば、夫A、妻Bそれぞれ1500万円づつ債務を負えばよい、ということになりますが、事情によっては片側からしか債権の回収ができなくなってしまうと、銀行は困ってしまします。

そこでこのようなリスク回避のため夫A、妻Bどちらにも3000万円の請求ができるという合意をしておくことによって、銀行は回収できないリスクを回避できる。このように夫A、妻Bが共同で負う債務を連帯債務といいます。

連帯債務の相対効と絶対効

相対的効力

連帯債務者の1人について生じた事由が、他の連帯債務者に効力が及ばないということです。

前述の例でみると、各個人夫Aと妻Bが各々独立した債務を負うので、例えば夫Aが破産手続き開始の決定を受けても妻Bには効力が及びませんので、債務金額は3000万円のままです。

絶対的効力

連帯債務者の1人について生じた事由が、他の連帯債務者に効力が及ぶということです。

その事由について下表にまとめ、下記の例にて解説します。

債権者Aは3000万円をB,C,Dが連帯債務を負っています。

              連帯債務の絶対的効力
弁済Bが債務を弁済すると、その額だけ他C,Dの連帯債務の債務も消滅します。
更改Dが、土地付き一戸建て住宅をAに引き渡すという契約内容の変更をすれば、B,Cの債務も消滅します。
混同DがAの相続人だとして、Aを相続した場合、Dが弁済したこととされ、B,Cの債務も消滅します。
相殺DがAに対して、3000万円の反対債権を持っている場合、DがAに対してその反対債権で相殺すると、弁済したと同じなので、B,Cの債権も消滅します。
但し、Dが相殺しない場合でも、他の債務者B,CはDの負担部分の1000万円を限度に相殺を援用できるので、債務金額は2000万円となる。

まとめ

過去問題を解く際に、A,B,Cと登場人物が出てくるので、相関関係を図で書く練習をしておきましょう。それも極力単純で自分でわかるような書き方を構築するといいと思います。

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