1.権利関係(民法)⑩用益物権・相隣関係

この項は頻繁に試験に出題されるわけではないのですが、地役権・相隣関係については何度か出題されています。いずれにせよ、宅建士としての知識をきちんとつけておかなければなりませんので、しっかり学習しておきましょう。

用益物権

用益物権とは、端的にいうと「他人の土地を使わしてもらえる権利」です。使用の「用」と収益の「益」で「用益」といいます。

用益物権の種類

用益物権の種類                  概要
地上権(ちじょうけん)工作物または竹木を所有するため、他人の土地を使用することが出来る物権
永小作権(えいこさくけん)小作料を支払って他人の土地を耕作または牧畜を行うための物権
地役権(ちえきけん)他人の土地を自己の土地の便益のために用いる物権
入会権(いりあいけん)町内会などの住民が他人の土地を草の採取や遊水地などで使用することのできる物権

「工作物」と家などの建物が代表的であるが、他にも電柱、橋、広告塔、トンネル、石油タンクなども含まれる。竹木は主として植栽の目的となる樹木及び竹類を指す。小作は、稲、果樹、茶など。

地上権

地上権の性質

地上権は「物権」であって、直接物を支配できる権利である。なので、地主の承諾なしで譲渡や転貸もできる。これに対し賃貸借は「債権」であるため、賃借権を相続は出来るが、地主の承諾なく譲渡することはできないのです。地代は有償でも無償でも、当事者同士で決められるます。

地上権の取得

それから、例えばあなたがAさんの土地を借り地上権を得て、家を建てたとします。そのあとにAさんが破産などをして、その土地が第三者に渡ってしまった際に、対抗できるように地上権を登記する様、地主に請求することが出来ます。そして地主は登記に協力する義務があります。

地上権と賃借権の違い

賃貸借の場合賃料のないものは「使用貸借権」となります。地上権と貸借権はよく似ていますが、違いをよく理解しておきましょう。下記に対比表を作成しました。

     地上権      貸借権
権利の種類(用益)物権債権
有償/無償どちらでも良い有償
譲渡・転貸地主の承諾は不要である地主の承諾が必要である
登記地主は登記協力義務を有する地主に登録義務は無し    
地上権と賃借権の対比表

存続期間

  1. 地上権の存続期間は、契約で自由に決められる。但し、建物所有が目的とする地上権の場合は、借地借家法のルールが適用され、最短30年以上とされている。
  2. 地上権の存続を存続期間を契約で定めないときは慣習により決める。慣習がない場合は裁判所が20年以上50年以下の範囲で決定する。

地役権

地役権とは

まずは、下記の図で解説します。要役地に住んでいるのがAさん、承役地の地主であるのがBさんだとします。Aさんは土地が道路に面していないので、このままだと出入りができませんよね。なのでAさんとBさんは「地役権」という契約をします。

     地役権の凡例

定義としては、その設定契約で定められた目的、例えば通行、引水などの目的に従って、自己の便益のために、他人の土地を利用する権利のこと。

  • 承役地:利用される側の土地
  • 要役地:利用することが必要な土地

地役権の性質

  • 常識で判断すれば当たり前の話なのですが、法律上は紛争の防止のために細かく規定しています。
  性質                 内容
1 地役権の成立地役権には承役地・要役地が必要であるが、必ずしもその二つが隣接している必要はない。
2 地役権の付従性・随伴性要役地から地役権を分離して譲渡したり、要役地とは別の権利のもくてきとすることはできない。なので、要役地の所有権が移れば地役権もそれに伴って移る。
3地役権の不可分性要役地や承役地の地主は、地役権を分離することが出来ない。なので、土地が分割されて譲渡されたとしても、地役権はそのまま残るので、従来通り使用することが出来ます。
4地役権と共有上の図(地役権の凡例)で、要役地をA,Cの二人で共有していた場合、自分の持ち分だけの地役権を消滅することはできない。
地役権の内容とその性質

地役権の消滅原因

地役権は、もし権利を20年間行使しないとき(要するに使用しないで放ったらかし)は時効により消滅する。

その他の用益物権

永小作権

永小作権の性質
  • 永小作権とは他人の土地を借り、工作や牧畜を行うこと。
  • 物権なので譲渡性も相続性もある
  • 小作料支払い義務を負う
永小作権の取得と存続期間
  • 永小作権は通常、契約によって結ばれるが、譲渡、相続、遺言、時効などによって取得することもある。
  • 永小作権の設定、移転は登記をしなければ第三者に対抗できない。
  • 永小作権の存続期間を契約で定めるときは、20年以上50年以下としなければならない。
  • 永小作権の存続期間を定めなかったときは慣習による。慣習がない場合は一律30年とされる。
永小作権の効力
  1. 土地の使用…設定契約によって定められた目的の範囲内
  2. 譲渡、転貸…自由にできる。譲渡禁止特約も有効であるが、登記をしなければ第三者に対抗できない。
  3. 小作料支払義務…必ず支払い義務を負う。

入会権(いりあいけん)

入会権の性質

一定地域の住民が山林原野で、薪木、草を採取するなど、共同で収益する慣習上の権利。

入会権の取得と効力
  • 各地の慣習にゆだねている
  • 取得、滅失、変更は登記がなくても(登記はできないため)第三者に対抗できる。

相隣関係

平たく言うと、お隣さん(隣地)同士お互いの家(不動産)を使用するにあたり、よりよい関係を維持していくため、それぞれ主張もあるがその機能を制限し合いながら協力しましょう、という関係のことをいいます。

例として、隣地の通行、上下水道、境界付近の建築制限など。これらについて民法で規定されています。

隣地使用・立入権

建物や塀、壁を作るとき、隣地と近かったりすると隣の敷地に入って作業しなくてはならない時ってありますよね。こんなとき必要な範囲内であれば隣人の承諾を得れば立ち入ることが出来ます。ただし、その結果隣人の家が破損したりした場合、損害賠償の請求が出来ます。

竹木の切除、根の切取り

竹木と木の根

上の図のように、隣地の竹木の枝葉が境界線を越えてきても自ら切り落とすことはできないが、所有者に切除する様請求できる。

また、木の根が境界線を越えてきた場合は、自ら切除することが出来る。

公道に至るための他の土地の通行権

上の図を見ると、Aの土地はB,Cの土地に囲まれてしまって行動に面していないですよね。このような場合は、BあるいはCの土地を通行することができます。その際は最も損害の少ない場所と方法を使わなければなりません。Aのような土地のことを袋地(ふくろち)、B,Cのような土地を囲繞地(いにょうち)といいます。

川、池、海を取らなければならない場合も同じです。崖があって土地と公道に著しい高低差がある場合も同じです。

  1. 通行権者は、必要に応じて自ら通路を開設することができます。この場合、囲繞地所有者の承諾は必要ありません。
  2. 通行権者は、囲繞地の損害に対して、原則として1年ごとに償金を支払う。
  3. 袋地の所有権を取得した者は、所有権移転登記を受けていなくても、囲繞地通行権を主張できる。

境界線付近の建築

建物を建てるときは、土地の境界線から50cm以上離さなければならない。違反を見つけたら、隣地所有者は中止あるいは変更させることができる。ただし建築開始から1年経過あるいは建物が完成してしまった場合は、損害賠償のみ請求できる。

境界標設置権

土地の所有者は、隣地所有者と共同費用で境界標を設置できる。費用はその土地の面積に比例して分担する。

目隠しの設置

下図のように、プライバシーの観点から、境界線から1m未満の距離で他人の宅地を見通すことのできる窓または縁側・ベランダを設けるときは、目隠しをつけなければなりません。

自然水流の妨害防止

水は上から下に自然と流れてくるものです。下図のように緑の家の住民が自分の土地に水が流れ込まないようにと、擁壁などを設置してしまったら、その上に住む黄色の家は洪水になってしまいます。なので、このように擁壁や盛り土をして、水が流れてくるのを妨げてはならないのです。

自然水流の妨害

まとめ

地役権や相隣関係は何年かに一度、忘れたころに出題されています。距離や年数の数値を正確に覚えるようにしましょう。

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