1.権利関係(民法)⑪担保物権一般・質権

みなさんは他人にお金を貸す時って、きちんと返してもらえるのか不安だったりしませんか?親しい間柄ならまだしも、あまり面識のない人にはむやみにお金を貸したりしないですよね。これが銀行、質屋さんなど商売でお金を貸す職業なら、貸したお金を回収できなかったらつぶれてしまいます。なので銀行や質屋さんはお金を貸す時には不動産や物などを抵当にしたり、預かったりするのです。返してもらえない場合は預かった権利を売却するなどして損失にならないようにします。この権利を「担保物権」といいます。担保物権では留置権、先取特権、質権、抵当権がありますが、その中の抵当権については次回⑫にて個別に詳しく解説します。

担保物権

担保物権の意義・種類

では、ケーススタディでみていきます。

AさんはBさんに10万円を貸す代わりに、Bさんからロレックスの腕時計を担保に預かりました。

このように、Aさん(債権者)の立場ではBさん(債務者)から弁済してもらえる保証があればいいのですから、Bさん(債務者)の所有物を預かって弁済を間接的に(腕時計を物質にして)強制するという方法でも目的を達成できますね。これを「留置的効力」といいます。

担保物件の種類

留置権

自動車屋さんAは、Bさんから自動車の修理を依頼されました。自動車の修理は終わりましたが、Bさんはお金が無くて代金を払えませんでした。

このような場合、自動車屋さんAさんはBさんが代金を払うまで自動車を留置することができます。このように他人の物を占有しているものが、そのものに関して生じた債権の弁済を受けるまでそのものを留置して、債務の弁済を間接的に強制する担保物件を留置権といいます。

留置権のある者は、その目的物を自分のもの以上に注意して占有しなければなりません。これを善管注意義務といいます。

留置権は物の占有を要件としているため、不動産の留置権であっても登記は不要である。

先取特権

A工務店はBさんから依頼を受け、Bさんの土地に家を建設しました。しかし家が完成してもBさんは経済状況が悪化して代金を払えなくなってしまいました。

このような場合A工務店は、この家を他の人より先に競売に出する権利があります。これが先取特権です。このように特定の債権を有する者が、債務者の一定の財産から、ほかの債権者より優先して弁済を受けることができる担保物権です。

先取特権の種類
  • 一般の先取特権…従業員の給与などを会社から優先的に先取りできる。会社の全財産が対象。
  • 動産の先取特権…旅館の宿泊代金など。相手の特定の財産(持ち物など)のみが対象となる。
  • 不動産の先取特権…下表参照
不動産保存の先取特権不動産の滅失・損傷を防止するなど、その保存に要した費用について、公平の念から認められたものである
不動産工事の先取特権不動産の工事費用の債権を有する工事の設計者、施工者、監理者が、その不動産の上に先取特権を有することを認めるのが公平であるとの観点から定められているもので、新築に限らず、増築・改築の場合でも認められている。いずれも工事によって不動産の価格が現に増加していることが必要で、先取特権は現に存する増加額だけ認められる。
不動産売買の先取特権売主が代金を受領する前に目的不動産の所有権を買主に移転した時は、その代金及び利息について、その不動産の上に先取特権を認めるのが公平だからである。

質権

A質屋は、Bさんからツボを担保にお金を貸しました(質権設定契約)。Bさんが弁済するまでA質屋はツボを手元にとどめ置いていました。しかしBさんはなかなかお金を返してくれません。

このような場合A質屋(債権者)はBさん(質権設定者)から担保としているツボを優先的に売却して債権行使できます。債権者がその債権の担保として債務者または第三者から受け取ったものを、債務の弁済がなされるまで留置して、債務の弁済を間接的に強制するとともに、弁済がなされない場合には、そのものから優先弁済を受けることができる担保物件のことです。

質権の設定
  1. 質権は当事者間の質権設定契約による。担保提供は第三者(家族、友人等)でも可能である(物上保証人という)。
  2. 質権設定契約は、担保にする目的物を引き渡して初めて成立する(要物契約)
  3. 質権に設定できるものは、譲渡できるものが前提である。(動産、不動産、その他の財産権。

抵当権

抵当権については次回⑫にて解説します。

担保物件の性質

担保物権とは債権を担保するものだということがお解りいただけたかと思います。それではその4つの性質についてケーススタディでみていきます。

付従性

A銀行は、Bに3000万円の住宅ローン(債権)を貸付ていました。Bは30年の返済期間を終え3000万円を完済(弁済)しました。そのことでBの自宅に設定されている抵当権は消滅しました。

債権者が債務者に弁済したことに付随して抵当権も消滅します。

随伴性

A銀行は、Bに2000万円の債権とBの自宅の抵当権を担保としていましたが、Bは月々の返済が滞ってしまい、A銀行はC信用会社に債権を譲渡しました。それに伴い抵当権もC信用会社に移転しました。

債権者が債権を譲渡したことに伴って、譲渡先に抵当権も移転します。

不可分性

A銀行は、Bさんに3000万円の債権と、Bさんの家の抵当権を有していました。Bさんは3000万円のうちの1500万円を弁済しました。

債権者が債務者に債務の一部を弁済されたとしても、全て弁済されるまで抵当権(担保権)は全部に効力があります。抵当権は半分だけにはならないのです。

物上代位性

A銀行は、Bさんに3000万円の債権と、Bさんの家の抵当権を有していました。Bさんは家に地震保険に入っていました。あるとき大地震があり、Bさんの家は全壊してしまいました。

この場合、家の滅失によって抵当権も消滅しますが、代わりに(代位)地震保険にその効力が及ぶことになります。留置権だけはこの物上代位性を有しません。

まとめ

この論点は、頻出問題ではありませんがわかりにくい論点です。担保物件の持つ性質をよく理解しておくことがカギになりますので、テキストを読んで過去問を解く、といったことを繰り返しおこないましょう。

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