1.権利関係(民法) ④契約の成立 手付金 条件と期限
契約の成立
契約は、口頭だけでも成立します。例えば、Aさんが、「この家を買います」と言い、Bさんは、「Aさん、この家はあなたにお売りします」と口約束だけでも成立したことになるのです。このように合意だけで成立する契約を「諾成契約」といいます。(反対に、契約時に現物の引き渡しが必要な契約を「要物契約」という。)
しかしながら現実には、不動産のような大きな取引の場合には、口約束だけだと、後になってAさんが「買うなんて言ってないよ」などと、言った、言わないにならないように、契約書などの書面を交付して、証拠を残すようにしているのです。前述の例で、Aさん、Bさんは家の売買契約を行うと、Aさんはその家の代金を、Bさんはその家を引き渡す義務(債務)がありますよね。この場合、Aさんが代金を支払わないなら、Bさんは家の引き渡しを拒むことが出来ます。これを「同時履行の抗弁権」といいます。
民法が規定する契約の種類は13種類ありますが、宅建の受験対策では次の6種類を抑えておきましよう。
- 売買契約
- 賃貸借契約
- 贈与契約
- 使用貸借契約
- 委任契約
- 請負契約
手付金
前項の例で解説します。「買主のAさんは、売主Bさんの家を1000万円で購入する契約を締結する際に、手付金として代金の10%の100万円支払いました。」これが不動産売買でよくある手付金です。このように契約締結の際に、どちらか一方から相手方に交付される金銭その他の有価物を、手付金または手付と呼んだりします。
手付金の種類は次の3種類があり、当事者間で決めますが、特に指定しなければ民法では「解約手付」と推定します。
- 証約手付…契約が締結されたことを示すため
- 違約手付…債務不履行があった場合に、その損害賠償の額を予定する
- 解約手付…手付の額だけの損失を覚悟すれば、相手方が履行に着手するまでは契約の解除ができる。
では、前述のAさん買主、Bさん売主の例で解説します。
- 買主Aさんは、売主Bさんの家を1000万円で購入する契約をし、その際に100万円の手付金を支払っていましたが、事情があり家を引き渡してもらう前に手付金の100万円を放棄して、契約を解除しました。
- 売主Bさんは、買主Aさんに家を1000万円で売却する契約をし、その際に手付金として100万円をもらっていましたが、他に高く購入してくれる人がいたので、Aさんが購入の履行に着手する前に、手付金の倍額の200万円をAさんに現実に提供して、契約を解除しました。
これを不動産業界では「手付流し」と「手付倍返し」と云います。
条件と期限
それではまたAさんBさんの出番です。
「Aさんは、家の代金の内、600万円を銀行から融資(ローン)を受けて代金を支払うことにしましたが、銀行の審査が通るかわかるのは1週間後です。なのでBさんは、銀行の審査が通ることを条件に期限を1か月以内と決めて売買契約をしました。」
ということで、「条件」とは、まだ発生するか否かわからないこと(本件の場合はローン審査)、「期限」とはその事実が確実であるもの(本件の場合は1か月以内)となります。
停止条件と解除条件
少しややこしいのがこの停止条件と解除条件です。試験でもよく出題されるのでしっかり理解してくださいね。では例文です。
「Bさんは、娘のC子に結婚することを停止条件にして、家を贈与することにしました。」
一見すると、C子さんが結婚したら家を贈与されないんじゃないの?と解釈してしまいますよね。それはまるっきり逆なのです。C子さんが結婚すると家の贈与が発生するのです。次のようにして解釈してください。
「C子さんが結婚するまでは「家の贈与」という効力が停止していて、結婚すると同時に効力が発生する」となります。なのでC子さんは結婚しないと、家を贈与されないのです。ある事実が生じることにより、法律行為(この場合は贈与契約)の効力が発生するのであります。これが「停止条件」です。紛らわしいですがしっかり理解しましょう。
次に解除条件です。
「Bさんは、娘のC子さんが同居を解消したら、贈与しないことを解除条件に、家を贈与することにしました」
解除条件は解かりやすいですね。ある事実が生じる(この場合は同居をやめてしまう)ことにより、効力が消滅するのであります。これが「解除条件」です。
まとめ
この単元は宅建業法でも関連しますので、よく理解しておいてください。頻出はしませんが、停止条件はひっかけ問題として出題される可能性があります。
私の作成したレジュメを貼っておきますので、参考にして自分の理解しやすいレジュメを作成してみてくださいね。人の作ったのだけを見ても、なかなか頭に入ってきませんよ。↓
それから、独学の場合テキストは必ず最新版を準備しましょう。最低限基本書と過去問題集は必須です。原則はテキストでとし、ブログやyoutubeは補助的役割として活用しましょう。↓
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