1.権利関係(民法)⑤売買 売主の契約不適合責任 買戻しの特約

民法改正前は「契約不適合責任」のことを「瑕疵担保責任」といっており、法改正により呼び名も中身も変わりました。改正前のルールでは時代の背景に適していなかったのでしょう。今回はその改正点についても解説していきます。

※「瑕疵」とは、欠陥・欠点のことです。

売買

売買契約が締結すると売主、買主にそれぞれ債務を負いますよね。売主は所有権を移転する義務、そして買主は代金の支払う義務が発生します。

例えば、あなたが車屋さんから自動車を買ったとします。あなたは自動車の代金を支払う債務、車屋さんは自動車を引き渡し、名義を変更する義務を負いますね。これが「売買」です。

契約不適合責任

あなたは自動車の代金を、全額車屋さんに支払いました。そして車屋さんから自動車が納車されました。ところが契約した時の車の色は白なのに、現物はシルバーだったとします。

もちろんあなたはお怒りですよね。売主である車屋さんに100%落度があります。これを「契約不適合」といいます。当然あなたには、売り主に対して是正を求める権利があります。それが次の4つになります。

  1. 追完請求権…代替や補修などをして、契約通りに是正させる
  2. 代金減額…1.が不可能な場合は、代金の減額を請求できる
  3. 解除…契約そのものを白紙にする
  4. 損害賠償…この不適合により損害を被った場合、請求できる

そして、民法では次の4つの要素が契約と適合しない場合を「不適合」としています。

  • 種類…異品、色違い、メーカー相違、意匠(デザイン)など明らかに異なるもの
  • 品質…雨漏り、シロアリ、疵(キズ)、破損、変色
  • 数量…現品数、面積、寸法など定量的欠陥
  • 権利…名義、登記内容

今回の自動車の色が違うことによる不具合は、上の4つの内「種類」に該当しますね。ですので売主である車屋さんは、「契約不適合責任」を負うこととなります。

それから、もしもあなたが契約時に納車となる自動車の現物を見ていて、シルバーだと知っていたとします。この場合ももちろん、売主の自動車屋さんは契約不適合の責任を負います。

旧民法では、上記のように買主がすぐわかるような欠陥を知っていた場合は、責任を負う義務はない、とされていました。今考えればおかしな話ですね。

期間制限

買主のあなたは、不適合内容に応じ以下の期限内に権利を行使しないと、時効となります。

期間(時効)は、不適合の種類により以下の様に変動しますので、しっかり押さえておきましょう。

種類・品質の不適合

買主が不適合を知った時から1年以内に通知しないときは不適合責任を追及できなくなる

※【例外】ただし、売主が引き渡しの時に不適合を知っているか、重大な過失によって知らなかったときは期間制限を受けない

数量・権利の不適合

  • 権利を行使できることを知った時から5年間
  • 権利を行使できるときから10年間

で時効消滅する。

この数字をよく覚えてくださいね。

買戻しの特約

民法では、不動産限定で「買戻しの特約」というルールがあります。ほかのことには適用されません。では例文です。

Aさんは、土地を所有しています。しかし急にまとまったお金が必要になり、その土地を売却しようと考えましたが、手放したくありません。そこで買主のBさんと話し合い、10年経ったら同じ値段で買い戻すという約束をしました。

これが買戻し特約です。所有権移転時に登記することが出来るので、以下の様に第三者に対抗できます。

Bさんは、5年後にこの土地をCさんに売却しました。Aさんはその5年後Cさんに土地を買い戻させてもらうように言いましたが、Cさんは断りました。

残念ながら「買戻し特約」が登記されているので、CさんはAさんに売り戻すしかないのです。

買戻し特約の条件

買戻し特約の条件は以下の3つになります。

  1. 買い戻しの契約は、売買契約と同時にしなければならない。
  2. 買戻しの際、元の売主から買主に返還すべき金銭は、当初の売買代金に契約費用を加えた額を超えることが出来ない。
  3. 買戻しの期間は、10年を超えることが出来ず、これを超える期間を定めても10年に短縮される。期間を定めなかったときは、5年以内に買い戻さなければならない。

まとめ

契約不適合責任については、出題される確率が高いです。不適合の種類と時効の期限の違い・例外規定を抑えてよく理解しておきましょう。今回はレジュメはありませんので、対比表にして自分だけのオリジナルを作成してみましょう。可能であれば、その自分で作ったレジュメを部屋中に貼っておき、いつでもすぐに見れるようにしておきましょう。あるいは常に持ち歩き、スキマ時間を見つけ読み返すようにしましょう。

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