1.権利関係(民法)⑧債権譲渡 弁済・相殺 その他の債権消滅原因
この項は、宅建試験でよく出題される傾向があるようです。対抗要件をよく理解しましょう。
債権譲渡
債権とは、他人に対して「~してくれ」と要求できる権利でしたね。債権は財産とみなされるので、原則債権者の承諾が無くても、自由に譲渡することができます。債権譲渡でよくあるのが金銭のやりとりです。では、またAさん、Bさん、Cさんに登場してもらい、ケーススタディで解説していきます。
Aさん(債権者)は、Bさん(債務者)に金銭を貸していました。Aさんは、その債権をCさんに譲りました。
上記の例で、Aさん(譲渡人)からCさん(譲受人)に、Bさん(債務者)に対する債権譲渡をしたことになります。
譲渡禁止特約
では、譲渡禁止特約の例をみていきましょう。
Aさん(債権者)は、Bさん(債務者)に、譲渡禁止特約を条件として金銭を貸していました。ところがAさんは、Dさんに債権譲渡してしまいました。
この場合、DさんがBさんに対し、債権が有効か無効かは、以下の様になります。
- Dさんは、譲渡禁止特約であることを知らなかったか、軽い過失があった(善意軽過失)
…有効 - Dさんは、譲渡禁止特約であることを知っていたか、重大な過失があった。(善意重過失)
…無効
指名債権譲渡の債務者に対する対抗要件
指名債権とは、有価証券化されている債権(手形・小切手など)以外の普通の債権をいいます。それではケーススタディで解説します。
Aさん(債権者)は、Bさん(債務者)に金銭を貸していました。Aさんは、その債権をCさんに譲り、Aさんは、その旨をBさんに通知しました。
と、このように債権者Aさんは債務者Bさんに対して、債権の譲渡の通知もしくは債務者Bさんが、AさんまたはCさんへの承諾が対抗要件になります。Cさんが直接Bさんに通知しても対抗要件にならないならないのです。
通知・承諾の効力(弁済・相殺)
上記ケーススタディのように、通知または承諾がなされれば、Cさんは債権譲受人であることを主張できます。逆に債務者Bさんも譲受人のCさんに対して、下記の3つような権利を主張できます。前述のケーススタディで具体例を解説します。
- 通知前に、Bさんがすでに弁済(この場合、お金を返すこと)し、債権が消滅した場合、BさんはCさんに、その消滅を主張できる。(弁済)
- たとえば、BさんがAさんに家を引き渡す債権を持っていて、お互いに同時履行の状態になっていた場合、通知前に、Aさんに対して持っていた童子履行の抗弁権は、BさんがCさんに対しても主張できる。(相殺)
- たとえば、BさんもAさんに対して債権が発生した場合(反対債権)、やはり通知前にBさんがCさんに対しても主張できます。(相殺)
債務者以外の第三者(二重譲渡)に対する対抗要件
ではまた、ケーススタディです。
債権者Aさんは、債務者Bさんに対しての債権を、Cさん・Dさんの二人に分割して譲渡しました。(二重譲渡)
このような場合の債権優先順位は以下の様になります。試験にも出たことのある内容ですので、丁寧に内容をおさえておいてくださいね。
- Cさん、Dさんのどちらが優先するかは、先に通知(または承諾)が到達したほうではなく、確定日付のある証書または通知※具体的には内容証明など(または承諾)」がある方を優先します。
- 両方とも確定日付がある場合は、通知が債務者Bさんに到達した方が優先となります。(到達主義という)
- 同時に到達してしまった場合は、債務者Cさん、Dさんは債務者Bさんに対し、全額の弁済を請求できる。この場合は債務者Bさんは債務の消滅事由がなければ、拒絶できないのです。
弁済
前項の債権譲渡においても弁済は至る所に出てきました。意味は大体お分かりだと思いますが、平たく言うと、
- 債務者がきちんと債務を行うこと。
- 弁済すれば相手の債権は無くなる。
- 弁済は第三者でも出来る。ただし、自分が弁済するって約束した場合はダメですよ。
弁済費用の負担と場所
さて、みなさんはネットショッピングやヤフオクなどで買い物をしたことがあると思います。この際代金の銀行振り込みなどの場合、買う側が振込手数料を負担すると思います。(特約もあります)
原則はこのように、債務者側が特約がない限り、その弁済に係る費用を負担することになっています。
弁済費用の場所は、特約がない限り、債権者の所在地となります(持参債務の原則)。
但し、不動産のような特定物の引き渡しの場合は、そのものが債権発生当時に存在する場所ですることになっています(家や土地なんて、債権者の家に持っていけませんよね)。
弁済の充当
それではケーススタディいきます。
Aさんは、Bさんに100万円の債権があります。BさんはAさんにとりあえず元本の半分の50万円だけ弁済することにします。ところが利息が9万円と弁済費用に1万円かかります。この場合充当すべきなのは、元本・利息・弁済費用のどれが優先されるでしょう?
この場合の50万円の充当優先順位は、
- 弁済費用1万円
- 利息9万円
- 元本に40万円
となりますので、Bさんの残債は100万円+1万円+9万円-50万円=60万円ということになります。ただしこれは民法で決められている原則なので、その取り決めは当事者同士の特約で決められることとなっています。
この次の相殺もそうですが、弁済とは債権の消滅の要件なのです。
相殺
相殺に関しても、債権譲渡の項にて出てきましたね。これも平たく言うと、
- 債務者と債権者が同じ種類の債権を持っていたとして、お互いに債務同士を対等額で消滅させること。
- 相殺する方の債権…自働債権という
- 相殺される方の債権…受働債権という
では、相殺のケーススタディを見ていきましょう。
AさんはBさんに100万円の債権があります。そのほかにAさんはBさんに対して10万円の債務を負っています。そこでAさんはBさんに、「10万円は相殺ってことにしましょう」(自働債権)で、Bさんは「わかりました。では90万円の残債になりますね」(受働債権)
となります。では以下に相殺の条件を見てみましょう。
- 債権が当事者間に債権の対立がある
- 双方の債権が同種の目的
- 双方の債権が弁済期にある
・自働債権は常に弁済期にあることが必要
・受働債権は弁済期が到来していなくても相殺できる - 双方の債権が有効に存在する
- 債権の性質が相殺を許さないものでないこと(以下判例)
・自働債権が不法行為損害賠償請求の場合…相殺できる
・受働債権が不法行為損害賠償請求の場合…相殺できない
・自働債権が受働債権差し押さえ前に取得…相殺できる
・自働債権が受働債権差し押さえ後に取得…相殺できない
まとめ
このブログでは、原則はテキストをもとにして、理解し様なるべく法律用語を使わないように書いています。しかし理解度を深めるために、テキストを読んで「ああ、これは「こういうこと言って言っているのか」というふうに、法律用語も覚えるようにしてくださいね。なぜなら本試験では法律用語で出題されます。まだテキストのない方は早めに入手しておくことをお勧めします。
↓では、本稿のレジュメを貼っておきますので、参考にしてみてくださいね。